Avicii (アヴィーチ) と Nicky Romero (ニッキー・ロメロ) による大人気曲である“ I Could Be The One (Nicktim) ”が、イギリス(UK)で、ダブルプラチナムを記録したということで、
*おそらく、ダブルプラチナムではなく、プラチナムかな?*
先日、『The Story Behind: Avicii vs. Nicky Romero – I Could Be The One (Nicktim)』が、YouTubeのニッキーの公式チャンネルより公開された。
この動画には、字幕がついていないのだが、日本語に翻訳して書き記したので、何が語られているのか、気になる方は、参考にどうぞ。
*今回は、「動画の音声を耳で聞いて、それを自分の頭で翻訳して、日本語に変換し書き記す」という作業だったので、当然、字幕を訳するよりは、正確性が落ちてしまいますが、そこは、ご了承下さい。*
因みに、この記事は、“ I Could Be The One ”づくしです。笑
“ I Could Be The One ”の裏話
The Story Behind
ニッキー、まず最初に渡したいものがある。(*この動画の唯一の字幕部分*)
⇨額縁が渡される。
⇨ニッキーが驚きを表す。
以下、『ニッキーの語り』を翻訳。
“ I Could Be The One ”が、イギリスで、60万枚のセールスを突破したことを、ここに記します。
ゴールドディスクをもらうのは、いつだってすごく嬉しいよ。やばいね。うん、これは、、、名誉だよ。でも、もちろん、これは、Avicii (この曲に参加した) のおかげだと言っても過言ではないからね。あとで、これと一緒に写真を撮ろうよ。(ああ、もちろんだよ)
これは、ここに置いといていいかな。(いいよ)
〜 本編開始 〜
僕には、たくさんの楽しい思い出があるよ。Timとの出会いについて。そして、、、実はこの曲は、とても自然な流れで生まれたんだ。出会って最初の頃は、音楽についてではなく、大体は他のことについて語り合っていた。あるフェスティバルで会ったことを覚えてる。(ニッキーは、このフェス名をオランダ語で言っている) 小さな船の上で、どこか行くには、漕いでいく必要があったんだけど、パフォーマンス・ステージへ行く時だった。ティムと僕は、同じボートに乗っていて、彼はそこで軽くDJパフォーマンスをすることになっていた。そこには、Tiesto (ティエスト) だったり、他のアーティストも、やって来てたんだけど、それで、彼のDJセット(パフォーマンス) をチェックしたんだ。確か、2010年の初頭だったかな。2009年だったかもしれないけど、2010年だったと思う。それで、あの頃の僕たちは、既に“自分のスタイル(音楽に関する)”というものを持っていて、彼は、真顔でジョークを言うセンスも、持っていたよ。彼らしいユーモアだよね。それと、少しばかり不安定な側面もあったよ。でもそれは、アーティストとしての活動をし始めた頃によくあるやつだ。
それで、うん。人生を本当に楽しんでいたよ。“音楽に夢中になっている若者たち”って感じだったね。で、しばらくたって、僕たちは音楽の話もするようになって、その頃の彼のマネージャーは、Ash Pournouri (呼び名 : アッシュ) で、
僕のマネージャーは、アッシュと知り合いで、「じゃあ、セッションを組もうよ」という話になって、それが実現したんだ。僕は、ストックホルムに行って、彼もこっちに来て、曲作りをしたんだ。両方のセッションでね。1つは、完成から程遠くて、IDのままだったんだけど、もう1つは、完成したんだ。それが、“ I Could Be The One ”だ。
でもその頃はまだ、この曲をそう呼んではいなくて、『Nicky Bomb (ニッキー・ボム)』って呼んでたのを覚えてるよ。笑
うん。そう、全ては、とてもスムーズに運んでいって、こんなヒット曲になるなんて、思ってもみなかったよ。今日(こんにち)のようにね。
公式ミュージックビデオ
で、ティムは「FruityLoops (現在は、『FL Studio』と呼ばれている作曲ソフト)」を使っていて、僕は、Mac ユーザーだから、『Logic Pro』という作曲ソフトを使っていたんだけど、彼は、Windowsユーザーだったから、僕たちは、毎回、交換し合う必要があったんだ。ファイルを取り除いて、プラグインして…。それで、ティムは、「君(ニッキー)の“Kick Drum(キックドラム)”を使いたい」と。僕のキックドラムが好きだと。* キックドラムとは、曲の中で、一定のリズムをとるサウンド。よくEDMの曲で聞くやつ。トントン・トントンみたいな…。*
僕のキックドラムは、パンチー過ぎなくて、マイルド過ぎもしなかったから…。作曲しない人はこの話を聞いても、意味不明だと思うけどね。まあ…、そういうわけで、僕のキックドラムを使うことになったんだ。それで、じゃあ、キックドラムは僕のを使って、メロディーは、君のを使おうと。なぜなら、ティムは、とってもメロディーを作るのが上手いからね。で、彼はいくつかのプロジェクトを開いて、1つのプロジェクトには、たくさんの異なるメロディーが入っていたんだけど、彼は、それらを1つずつ聞かせてくれて、「ああ、このやつ良いなぁ。これを少しだけ、いじってみない?」、なぜなら、僕はその最初の部分が好きだったから。最後の部分は、なんか少し合わない感じで…。
それで、彼はそれを僕たちのプロジェクトに転送して、僕のキックドラムも、一緒にね。で、いくつかのループを足して、最初の部分が出来上がった。*その箇所は、この動画 (The Story Behind) の5:21〜5:23の部分で、ニッキーさんが、口ずさんでいます* それは、メロディーだったんだけど、リスポンスをする必要があったんだ。答えを出すみたいに。メロディーの一部分を。これを音楽の専門用語では、『Call & Response (コール・アンド・レスポンス)』って言うんだけど。
だから、僕たちは、わかってない部分があり、その答えが必要だったんだ。で、その答えは、*ニッキーが同動画にて実演中*、実際に、彼がそれを思い浮かんだんだ。凄いことだよ。彼はそのメロディーに対してどう答えるべきかを感じ取ったのだからね。
で、それから、あるパートに来て、僕は言ったんだ。オッケー…、僕の音楽の特徴は、メロディーが、真っ直ぐな感じだったから、じゃあ、セカンドドロップはそうしてみようと。*ニッキーが同動画にて実演中 (この曲の特徴的なドロップ部分で、メロディーが真っ直ぐ伸びていく)*、で、そこが、セカンドドロップの部分になったんだけど、実際にあそこまで長く引っ張ったメロディーは、僕の今までの曲の中でも、レアなケースで、それで全体のドロップ部分もまた、真っ直ぐなメロディーになったんだ。今考えてみると、なんであの時そうしたのか、全く意味不明なんだけど。笑 この曲というのは、特別に、上手くフィットしたケースだよ。それで、ある日、そこを完成させて、さらに、いくつかのインストロメンタル (楽器音) や効果音を付け加えて、僕たちは、少しだけミックスに取り組んで、と言っても、今の自分に比べれば、全然それをしたとは言えないくらいだけど。うん。で、この曲は出来上がったんだ。“ I Could Be The One ”のベースとなる部分がね。で僕は、この曲のパワーやインパクトを、本当に本当に過小評価していたと思う。僕がストックホルムのホテルに戻った時、僕のエージェントに電話したことを覚えている。ナタリーにね。彼女は、他の会社で働いていて、僕はこれまでに、彼女とたくさんの仕事してきたんだけど、彼女は、僕の活動のかなり初期の頃から一緒に働いていてね。で、僕たちは話したんだ。彼女が「セッションはどうだった?上手くいったの?」と。それで僕は、「うん、上手くいったよ。良い曲が出来上がったよ!」
その数日後、スコットランドのグラスゴーにあるナイトクラブで、この曲を流したんだけど、その時は、僕しかいなくて、ティムは、アメリカのワシントンDCの『Day Grow (フェス名)』に行かないといけなかったから。それで、この曲を流したんだけど、その頃はまだボーカルがついてなかったから、で、僕たちは、“ Justice – D.A.N.C.E. ”のボーカル部分を加えて、「Just easy as A-B-C One, two, three, four, fight!」のやつさ。それがこの曲と相性が良くてね。で、僕はそのバージョンを流したんだ。
Avicii & Nicky Romero – ID (Nicktim) w/ Justice – D.A.N.C.E (Acappella)
*ニッキーがその時に流したバージョンは、これと同じ音源だと思われる。(この音源は、ティムが、Day Grow で流したバージョン)*
で、みんなはそれを“ Justice – D.A.N.C.E. ”のマッシュアップだと呼んだんだ。『Nicktim』とも、名付けられていた。ファンの間では、それがその曲のオリジナルIDだと認識されていたんだ。それでもあまり、と言うのは、この曲は僕が普段あんまり作らないタイプのメロディーだから、それを流したばかりの頃は、あまり反応がなかったしね。僕はあまり自信を持てなかったんだ。で、その後、ティムが、「ニッキー (Dude!)!これは絶対リリースすべき曲だ。すごく反応がいいよ」って。それから、ミュージックビデオを撮影して、次の日に、YouTubeへアップしたんだ。
〜 ナレーション 〜
音楽界から悲しいお知らせです。EDMスター Avicii が、亡くなりました。オマーンのマスカットにて彼の遺体が発見されました。Avicii こと、スウェーデンで生まれた Tim Bergling は、EDM (エレクトロ・ダンス・ミュージック) のパイオニアとして知られています。彼は、2013年に、“ Wake Me Up ”をリリースして、DJとしても、非常に人気を博していましたが、2016年に、健康上の理由から、ツアーを引退しました。
〜 再び、『ニッキーの語り』へ 〜
僕がその知らせを知ったとき、Avicii が亡くなったことを信じられなかった。うまく言葉に出来てるかわからないけど、自分が思い出せる体験の瞬間としては、マイケルジャクソンが亡くなった時の感覚に近いよ。でも、ティムは、もっとパーソナルだった。彼と一緒に働いて、彼を知り、友達になって、だからまたあの時とは少し違った感じなんだけど、明らかに、もっと個人的な出来事だったから…。でも、なんて言うか、時間が止まっている感じだったんだ。地面に釘付けにされるような感覚というか。とっても、とっても、心を揺さぶられる瞬間だった。それで、こう思ったんだ。僕たちが見てない中で、彼の中で、何かが、酷くおかしな方向へ進んでいっちゃったんだと。僕は何も知らなかった。僕たちは普段、WhatsApp (海外でよく使われてるメッセージアプリ) でやり取りしてて、僕たちが取り組んでいる楽曲についてや、彼が取り組んでいたアルバムに関して聞かせてくれたり、で、彼は、“ Heaven ”を送ってくれたんだ。あの時はまだ公式にリリースされていなくて、公式なリリースの2年前かな。僕は、凄くすごく、その曲に感銘を受けてね。
Heaven (by Nicky Romero)
*ティムが、ニッキーに送った“ Heaven ”の音源。この動画は、Tomorrowland 2018 (8月時) のものだが、ニッキーは、ティムの死後、ちょくちょく、“ Heaven ”を流していた。“ Heaven ”の公式なリリース日は、2019年6月6日。ということは、2017年の時点で、ボーカルは、Simon Aldred より、Chris Martin の方が、有力になっていたということだろうか。*
だから…、うん。あれはフェイクニュースだと思ったんだ。現実じゃないと。それは、ティムじゃないんだと。何かが起こったに違いない。で、うん。あれは本当にショックな瞬間だったよ。間違いなく。僕の人生の中でも数少ない、何かおかしなことが起こったんだと。
それ以外は、また違った見方では、『Avicii Tribute Concert』。あれは本当に美しいコンサートだったね。
Avicii Tribute Concert
自分が、Ultra や、Tomorrowland、EDC など、大きなフェスティバルで、この曲を流す度に、僕は毎回エモーショナルな気分になるんだ。なぜなら、みんな歌ってくれて、この曲のメッセージやストーリーも知っていて、僕らの思い入れもあるしね。だから、この曲は再現出来ないものなんだ。レガシーのようなもので、この曲を携帯できるのは、とてもラッキーなことだよ。なぜなら、僕はティムと一緒に働けて、僕のキャリアにおいて、忘れられない思い出だ。うん、だから凄く嬉しいことだよ。と同時に、もちろん悲しくもある。もうティムとは新しい思い出を共有できないし…、言葉を正確に選ぶのは、すごく難しいよ。
この曲は、たくさんのところで流れている。僕は、ポジティブな思い出にフォーカスしようとしてる。僕はこの曲に関して、本当にたくさんのポジティブな思い出があるんだ。だから、ポジティブな側面にフォーカスして…。もうティムはこの世にいないけど、僕には存在しているんだ。僕の人生にも、頭の中にも。この曲には、本当にたくさんのポジティブな部分があるから、僕はそこにフォーカスしたい。僕たちは、この曲の制作をすごく楽しんだしね。
僕は、毎回この曲を流していた。僕はこの8年間、この曲を流さなかったことはないと思うんだ。だって、わかるだろ。もし僕がこの曲を流さなかったら、みんなが、…。
うん、とにかく嬉しい気持ちだよ。僕が耳にすることについて。この曲は、ハッピーな曲だと思うし、僕たちは皆、ティムの曲のポジティブな側面について、フォーカスすべきだと思うな。大体において。特に、この曲、“ I Could Be The One ”にもね。
きっとその思い出は、これからも残り続けるだろう。可能な限り、最高な形で。
〜 この動画の語りは、終了 〜
最後に
個人的には、正直、この動画を見て、少し物足りないというか、もっと制作にあたる込み入った話を聞きたい気持ちもあったが、おそらくここで、話されなかったことは、主にチーム Avicii の方で、進行されて行ったのだろう。
でも、素敵な動画だったと思う。
因みに、この真上の動画では、
“ I Could Be The One ”のボーカルが、“ Avicii – Dear Boy ”だった時のバージョンが、少しだけ聞ける。ティムは、とにかく引き出しをたくさん持っていて、それを実際にぶつけてみながら、自分にしっくり来るものを選んでいくスタイルだった。
これは、音楽制作に関わらず、クリエイティブな仕事をしている全ての人において、最も参考になる模範的なやり方である。
Avicii とシェイクスピアの共通点
最後におまけとして、
*ここからは、文体が変わります*
最近、私事ですが、シェイクスピアの作品を読むことにハマっておりまして (現在15作品読破中)、
『裏話動画の翻訳』にちらほら、“戯曲のト書き部分”の影響が見られるのは、おそらく、そのせいです。笑
因みに、シェイクスピアの訳は、
何人か翻訳者がいらっしゃる中で、個人的に、福田恒存 訳が1番好みでして、作品に関しては、「ハムレット」が、ダントツ好きです。
以下は、おまけのおまけですが、
読了した『シェイクスピアの作品』を、お気に入り順に並べておきます。
- ハムレット
- ジュリアスシーザー
- あらし (テンペスト)
- オセロー
- マクベス
- 夏の夜の夢
- アントニーとクレオパトラ
- ロミオとジュリエット
- 十二夜
- お気に召すまま
- 空騒ぎ
- ヴェニスの商人
- リア王
- じゃじゃ馬ならし
- リチャード3世
急に、なんでシェイクスピアの話になったんだ!?と思うかもしれませんが、
実は、一見何も関連がないように思えて、シェイクスピアと Avicii は、非常に似ています。笑
2人とも、世に出した作品のほぼ全部が傑作揃いで、かつ、マシンガンのように、ヒット作を連発してきた、音楽家と劇作家という違いはあれど、互いに、超一流の芸術家です。
因みに、彼らの本質的な共通点の1つとして挙げられるのは、
2人とも、作品のベースとなる何かを、サンプリングしていて、それをオリジナルものに作り変える才能に、半端なく長けているところです。
実際、Timの楽曲の80%くらいは、ベースの部分を、既に世の中にある楽曲から、サンプリングしてます。
“ Levels ”もそうだし、“ Freak ”、“ Never Leave Me ”, “ Hold The Line ”、“ Without You `、などなど、昔の曲のメロディーだったり、誰かのデモを使っていたり。Tim自身が、完成に必要な全ての材料を、自分のマテリアルだけで、最初から最後まで創作したものは、ほぼありません。
で、これは、シェイクスピアの場合も同じで、
ほとんど彼の作品には、『種本』がというのがありまして、最初から最後まで、自分で創作したと思われる作品は、「夏の夜の夢」と「あらし (テンペスト)」くらいで、あの有名なロミオとジュリエットも、リア王も、元々あった話で、それがシェイクスピア風にアレンジされ、現在では彼の作品として多くの人に認識されています。
こう考えると、「Avicii も、シェイクスピアも、盗作じゃないか」と思うかもしれませんが、彼らに共通するのは、彼らが手掛けた作品には、彼らにしか出来ない個性が、スタイルが、しっかりと表れていて、まるで、別の楽曲・戯曲に生まれ変わっています。
そこが、彼らの凄さなのです。
そして、それこそが、「本当の創造のプロセス」なのです。
全てを自分だけで、一からグランドアップするというのは、自然な創造のプロセスではなく、もちろん時には、そうなることもあるけれど、材料というのは、全てこの世界に、既に存在していて、それらをどう組み合わせるかによって、作品は生まれます。
そして、全ては、水と同じで、最も流れやすいところを流れていきます。
だから、その流れに逆らうほど、進みは遅くなります。
大事なのは、このシンクロニシティの流れに乗ることで、その中で、作品の種を引き寄せ、さらにそれを作為せずに、その流れの中で、育てていく (自分のマテリアルを加えたり、他のアーティストとコラボしたり) と、作品が自然に完成するのです。今回のシングル“ I Could Be The One ”のように。
*この辺は感覚的な話をしているので、少し抽象的です*
だから、逆に言い換えれば、
僕たちは、自分で作品を作るというよりも、作品自体が生命であり、作品が完成するとは、作品が最も機能する状態があるだけなのです。
意味不明かもしれませんが、
この感覚があると、『クリエイティブ・プロセス』というのは、一見遠回りに見えても、最も早く進んでいき、Avicii やシェイクスピアのように、傑作を連発することも可能になります。
別に傑作を連発することが目的ではなくて、その流れに逆らえば逆らうほど「高品質を高頻度で出すことは、不可能になる」という意味です。
作曲家に限らず、人は皆アーティスト (自己表現者) であるし、これからは、今までのように、機械に使われていた (機械の奴隷) だった時代から、機械やAIを使いこなしていく時代へと入っていきます。
そうなっていくと、
人類のほとんどは、何かしらの創作活動をして、生きていくことになり、多くの人にとって、これは自分事になるはずです。
その際、 Avicii (Tim Bergling) やシェイクスピアは、最高の手本と、なってくれるでしょう。
コメントを残す