2018年4月20日に、この世を去った Avicii (アヴィーチー)。
*本名=Tim Bergling (ティム・バーグリング)*
もうティムが亡くなってから、2年半が経過したが、今なお、彼の手掛けたシングルは、ポツポツと、リリースされている。
2019年は、ティムが生前取り組んでいたアルバム (全12曲) がリリースされ、今年、2020年には、彼が生前関わったシングルが、
計『4曲』もリリースされた。
これは、いちアヴィーチ・ファンとして、とても嬉しいことである。
だが、それと同時に、少し寂しくもある。笑
なぜなら、“ 公式なリリース ”というのは、その曲が「過去になる」ということだから。
2020年に、リリースされた Avicii のシングル『4曲』。
1. Forever Yours (Released by Kygo)
Kygo, Avicii, Sandro Cavazza – Forever Yours (Avicii Tribute)
リリース日 : 2020年 1月24日
Avicii (アヴィーチー) が、Ultra Miami 2016 にて、初披露した“ Forever Yours ”。
ティムとサンドロは、その後も、完成に努めたようだが、途中、色んなドロップを試しつつも、この「オリジナルバージョン (UMF 2016 Ver.) 」が良過ぎて、それを超える納得の行く状態には、辿りつかなかったようだ。
そのため、ティムが生きている間でのリリースは、叶わなかったが、
この曲のデモを作ったボーカルの Sandro Cavazza (サンドロ・カヴァッザ) が、ティムの死後に出会い、親友となった Kygo (カイゴ) を招き、Avicii への追悼を込めて、2020年1月に、リリースされた。
元々、“ Forever Yours ”は、初期の段階から、『サックス (楽器) のドロップ』が、魅力的で、トロピカルな要素を持っていたし、
Kygo は、トロピカルなサウンドが得意なアーティストでもあるから、個人的に、このリリースは、とても自然な流れだったように感じる。
そして、Kygo は間違いなく、Aviciiのバージョンに、限りなく近い状態に仕上げてくれた。
まずは、彼らを含め、ティムの家族にも感謝を伝えたい。ありがとう。
僕自身は、この完成されたバージョンに対して、素晴らしい仕上がりだと思っているし、この完成形に関して、何も文句はない。
Kygo とサンドロは、完璧な仕事を果たしたと思う。
けれども、その一方で、
何かが物足りなく感じている自分がいるのも、正直否めない。
Avicii – Forever Yours (Original ver. at Ultra Miami 2016)
Avicii が、Ultra Miami 2016 で流した“ Forever Yours ”は、とてもエネルギッシュだった。
だが、なぜか、完成形では、
そのパワフルさが、消えているのだ。
“ Kygo が完成させたバージョン ”と“ Ultra Miami 2016 ver. ”のわかりやすい違いは、
「Kygo が、新たに加えたドロップの部分 (ボーカルドロップ)」くらいであり、それ以外の部分はほぼ全て、元々のバージョンを限りなく再現している。
もしかしたら、BPM (曲の速さ) も、ほんの少し違うかもしれない。
でも、それ以上に、大きな違いを感じる。
それが具体的に何なのかはわからないが、おそらく、「ピアノの弾き方」違いが、最も大きな要素なのだと思う。
“ 完成形 (Kygo Edit) ”と“ 元々のバージョン (Ultra Miami 2016 ver.) ”を注意して聴き比べてみると、
このピアノの部分が、公式にリリースされたバージョンでは、Kygo (カイゴ) らしく、マイルドなテイストになっているのだ。
そのため、曲自体のエネルギッシュさが落ちて、「言葉では説明出来ないけど、なんか違うなぁ」と感じてしまうのかもしれない。
Avicii (ティム) の「ピアノの弾き方」というのは、かなり独特だ。
だから、その部分は、Kygo (カイゴ) ですら、再現出来なかったのだろう。
Avicii (アヴィーチ) が、曲を最後まで手掛けると、その曲に、力強いエネルギーが宿る。
きっと、多くの人が、Aviciiのシングルに惹きつけられるのは、彼が曲に残した“ エネルギー ”なんだと思う。
そして、
それが、Avicii (アヴィーチ) 特有の個性であり、他の誰にも真似できない部分なのだ。
2. Unbreakable (Released by Bunt.)
Avicii – Unbreakable (Original ver. at Ultra Miami 2016)
Avicii が、Ultra Miami 2016 にて、初披露されたシングルの1つである“ Unbreakable ”。
因みに、このデモは、Clarence Coffee Jr. というシンガーソングライターが書いたもので、Aviciiは、自身のレーベルを通して、このデモを受け取ったようだ。
そして、この曲が1番最初に、公開されたのは、Aviciiがアメリカ横断していた時のライブ配信 (#the crowning of prince liam) にて。
その時のボーカルは、オリジナルのデモと同じ Clarence Coffee Jr.が歌っていたが、
このアメリカ横断セッションの時に、Aviciiと同行していたサンドロがこの曲も試しに歌い、アメリカ横断の終点とした Ultra Miami 2016 では、サンドロをボーカルとしたバージョンで、公開された。
僕自身、この曲を初めて聞いた時、「史上最強に、カッコ良い!」と思った。
そして、「これは絶対にリリースして欲しいアイディアだ」と。
でも、Avicii (ティム) は、
2017年の8月に、“ Friends Of Mine ”というシングルをリリースし、その曲のドロップに、この“ Unbreakable ”の部分を用いた。
Avicii – Friend Of Mine (ft. Vargas & Lagola)
それは、「Aviciiが、“ Unbreakable ” を手放した。」ということも、意味していた。
だから僕は正直、
今後“ Unbreakable ”が、リリースされることはないだろうなと諦めていた。
だが、驚くべきことに、
Avicii と同じレーベルに属していた Bunt. というミュージシャンが、“ Unbreakable ”のデモを持っており、
しかも、実は、Avicii が、2016年に、この曲を公開する前から、このデモの完成に取り組んでいたらしく、彼らの手によって、2020年7月末にリリースされた。
Bunt. – Unbreakable (ft. Clarence Coffee Jr.)
リリース日 : 2020年 7月31日
個人的に、この Bunt. の完成形に関して、120点をあげたい。
文句なしの完璧な仕上がりだ。
Avicii のバージョンは、非常にパワフルで魅力的だったが、1つの作品として捉えた時には、何か足りていない印象を受けた。
おそらく、それは、Avicii 自身も感じていて、それが、この気に入ったデモをリリースせずに手放した理由なんだと思う。
このデモは、Avicii ではなくて、『Bunt.』を選んだのだ。
この“ Unbreakable ”というアイディアに関して、個人的に、ボーカルは、サンドロよりも、
Clarence Coffee Jr. の声質が好きだった。
また、Bunt. らしいフォーク系というか、ブルタージュ要素の混じった間奏部分が、最高だ。
Avicii (アヴィーチ) のバージョンも、相変わらず、超魅力的で、捨てたもんじゃないが…。
3. Crocodile Tears (Released by Bunt.)
Avicii – Crocodile Tears (ft. Vargas & Lagola)
この音源は、2013年に、Aviciiのパソコンのデータが、何者かに盗まれた時のもの。
それが、2019年9月に、“ Promise Of Tears (ft. Tim) ”, “ Give Up Ghost ”, などと共に、突然ネット上で、リークした。
Avicii は、運命のいたずらにより、それらのデモを失ったので、彼は、リリース出来なかったのだが、これまた、“ Unbreakable ”と同様に、当時、Avicii と同じレーベルだった Bunt. が、“ Crocodile Tears ”のデモを持っており、2020年9月に、公式にリリースされた。
Bunt. – Crocodile Tears (ft. Jens Hult)
リリース日 : 2020年 9月18日
公式にリリースされたバージョンでは、ボーカルは、Jen Hult が努めているが、
元々、デモの時は、Vargas & Lagola が、歌っていたようだ。
*Vargas & Lagola (ヴァルガス&ラゴラ) は、“ Hey Brother ”, “ The Days ”, など、Aviciiのシングルをこれまでに多数手掛けたシンガーソングライター。*
そして、今回の Bunt. の完成形も、文句なしの仕上がりだ。
デモの良さをそのまま残し、新たにドロップのメロディーを工夫して、完璧にマッチさせた。
因みに、間奏部分のトランペット系のメロディーは、Aviciiの未リリース曲“ We Burn (Faster Than Light) ”のドロップから、インスピレーションを受けている。*
Avicii – We Burn (Faster Than Light)
Bunt. が今年完成させた“ Unbreakable ”と、“ Crocodile Tears ”は、
どちらも、本当に素晴らしい。
“ Forever Yours ”, “ The Other Side ”も、Aviciiは自分のパートを終えて、バトンタッチしたが、Aviciiは、その2曲のデモをフィニッシュさせることが出来なかった。
この2つのデモは、
Avicii (アヴィーチ) が、とても気に入った種ではあったが、彼のものではなかったようだ。
4. The Other Side (Released by Cam)
Avicii – The Other Side (ft. Cam)
これは、ファンによるリメイクではなく、リークされたバージョンの“ The Other Side ”。
だが、僕はどうしても、この出だしのキラキラな部分が、Avicii にしては、少しクドイなぁと感じてしまう。
ある程度サウンドも締まっているし、クオリティーも、プロレベルではあるが、
Aviciiなら、何かが物足りないと感じて、リリースには至らず、ホールドしておく完成度だ。
Cam – The Other Side
リリース日 : 2020年 10月30日
個人的には、Camが、公式にリリースしたバージョンの方が、好みだ。
このバージョンには、間奏に入る時に、
“ God Willin’ (ガッ・ウィリング) ”という部分があるのだが、
正直、この部分があるかないかで、全然違う。
ある方が、圧倒的に良い!
もしかしたら、先にリークしたバージョンの方が良かったと感じた“ アヴィーチ・ファン ”は多いかもしれないが、
その部分に注意を寄せて、この曲を聞いてみると、この完成形の魅力をより味わえると思う。
また、この曲を聞いた印象として、
暗くて、少し不気味な印象を持った人も多いかもしれない。でもそれが、この曲の歌詞の内容を表現している。
この曲の歌詞は、「冷酷」だ。
そして、厳しい。
だから、この歌詞のコンセプトで、音楽だけ明るいと変な感じになってしまう。
最終的に、Camを中心としたカントリーチームで仕上げたバージョンなので、Aviciiらしさは、そこまで強く感じないが、この曲のまとまり感は、Aviciiらしいなぁと思う。
曲がキュッと締まっていて、無駄がない。
最後に
まとめ
Avicii (アヴィーチー) の未リリース曲が、
kygo (カイゴ) の元から、Bunt.の元から、そして、Camの元からリリースされることになると、一体、誰が予想しただろうか。
おそらく、生きている人間の中で、誰一人として、予測できなかっただろう。
でも、そういう期待や想像以上のことを、いつもしてくれるところが、Avicii である。
そして、そこが、僕が Avicii を愛してやまない理由の1つでもある。
Avicii の未リリース曲は、2021年も、リリースされる?
まだまだ Avicii の未リリース曲はある。
そして、僕が予測するに、
2021年も、Avicii のシングルはリリースされるだろう。
個人的には、2023年いっぱいまでは、まだ可能性を大いに占めていると思っている。
なぜなら、Avicii は、現在の音楽界の4年以上先を行っていたからだ。
時代が彼のスピードに追いつかないため、僕らのペースに合わせて、曲は公式にリリースされていく。
実質、2020年にリリースされたシングルの多くは、2013年〜2016年までには、プレビューされていた。
彼は、いつも想像を超えてくるので、特定の期待を持つことは出来ないが、
2021年も、 Avicii (アヴィーチ) の動きから、完全に目を離すことは出来ない。
Spotify でも、視聴可能。
Aviciiが生前に関わり、2020年にリリースされた計『4曲』を、1つのプレイリストへ。
YouTubeだと、各々でしか聞けないが、実際に、まとめて聞いてみると、
また違った発見がある。
Avicii らしさをがっつり感じることはないかもしれないが、彼の芯というか、個性を十分に見出すことが出来るだろう。
*Spotifyに登録してない方は、Apple Musicなどにて、プレイリストを個人で作成して、4曲まとめて、聞いてみると良い。*
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