Avicii New ID シリーズ「芸術家の秘宝(2008-2012)」




ただ今刊行中の記事———Avicii(アヴィーチ)の New ID シリーズ。

今回は、Avicii(アヴィーチ)の初期の時代となる「20082012」年頃の New ID、Remixなどのリーク曲に関して、紹介したい。

この時期のAviciiは「インストロメンタル」。

自身のサウンドにフォーカスし極めていく時期で、徐々にボーカルもサンプリングしていくこととなる。きちんと段階を踏んでおり、2013年以降はコンピューターからボーカルを切り取り配置していくのではなく、実際に「シンガー・ソングライター」とスタジオ入りし、現場にて一(いち)から作曲していく時期に突入する。

しかしそれが上手く機能したのも、2008年から2011年前後の”鎖国“の時期。自身のサウンドの土台を築いていくこの下積みの期間で徹底的に鍛えていたからであると言えよう。

つまり、2008年から2012年頃のAviciiの楽曲には、決して古いサウンドとは片付けられない「秘宝」が転がっているのだ。

それはAviciiを語る上だけではなく、『芸術家(アーティスト)』として、生きていく全ての人にとって非常に参考となる「エッセンス(本質)」が潜んでいるということだ。

Avicii New ID「2008〜2012」

1. Abow Sex (Full Mix Leak)

Avicii によるボーカルなしの楽曲”Abow“というタイトルの付いたIDがあって、それにKings Of Leon(キングス・オブ・レオン)の”Sex On Fire“のボーカル部分を追加したバージョン。

2011年には、AviciiのYoutube公式チャンネルの方で、3分程度のRadio Editはアップロードされているが、その「Full(フル)バージョン」と言われるリークした音源だ。

まあ別の言い方をすると、”Kings Of LeonSex On Fire(Avicii Remix)”のRadio Editされていないバージョンである。

個人的には、この「フルバージョン(Full MIX Leak)」がバランス良く、より”Abow“の魅力が引き立っているように感じる。

2. Punani (Avicii New ID)

この楽曲”Punani“は、Aviciiの2018年のプロダクションからリークした音源である。

タイトルは、”女性器“という意味。

ボーカルはデモの時期からEmeli Sande(エミリー・サンデー)とか、Zara Larsson(ザラ・ラーソン)にも似てるね。という意見も、他アラビックな無名の女性シンガーという噂もある。

全く2008-2012年のAviciiの楽曲ではないが、なぜか、この記事のこの位置に収まったので、省かずに、ここで紹介することにした。

個人的には、初めてこの”Punani“を聞いた時、

Nadia Ali – Rapture (Avicii Remix)

この”リミックス(2011年頃のAviciiプロダクション)”が頭に浮かんできたので、Avicii(2008-2012)に、仕分けしていたのかもしれない。

3. Stephan M & Laurent Simeca – Roxanne (Avicii Remix)

3:22〜のサウンドが、個人的に「Sick!」。

Avicii の初期のリミックス。

2011年に、”Levels“をリリースする頃まではこういう楽器のみの音源を作って、そこに既に知名度のあった他のアーティストのシングルのボーカルを乗っける。

または、それを Remix(リミックス)することにより、自身の音楽を表現することが多かった。

まずは、良い素材の『模倣』から入る。

創造』と『模倣』は表裏一体。『模倣』は『創造(クリエーション)』の基本。

だということかもしれない。

4. Tiesto & Sebastian Ingrosso – Generations (Avicii New ID)

今では、「EDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)」と言えば、巨大な業界であるが、当時はまだ駆け出しで、その「EDM」界を牽引していたのがTiestoやArmin Van Buurenだった。

下のインタビュー動画で、Avicii(アヴィーチー)ことTim Bergling(ティム・バーグリング)が、語っているが、

この”Generations“は、Avicii, Tiesto(ティエスト), Sebastian Ingrosso(セバスチャン・イングロッソ)とのコラボ曲であり、タイトルの意味は、”世代“。

Tiestoは、「56歳(2025年3月時点)」で、Sebastian Ingrossoは、「41歳(同時期)」、Timも生きていたら、「35歳(同時期)」。

Timはこのコラボレーションを、

Tiestoの「Old School(伝統的な世代)」、Sebastianの「Now School(今の世代)」、

そして日本で平成元年生まれに値する Aviciiは「New School(新世代)」。

この「Old Now New School (つの)」によるコラボレーション”Generations“に自分自身とてもワクワクしていると。また、2010年8月に収録されたこの動画では、これから多くの新曲のリリース控えていると語っている。

しかし、結局リリースには至らなかった。

Tiestoも、Sebastianも、おじさんだが、イケおじであり、時代遅れになる所か、若者以上に時代の最先端を常に走っていってるので、この3人のコラボ曲のタイトルは、

New Generations“でも良かったのでは?と、今振り返ると、そう思ったり。

Tiestoとは他にもコラボ曲があるみたいだが、Tim亡き今、完成させられないと語っている。

5. Tiësto feat. C.C. Sheffield – Escape Me (Avicii Remix)

Tiestoのシングルが、完全にAviciiの楽曲に生まれ変わっている。

7. Gotta Hold On | Restless (Avicii New ID)

Avicii の初期のライブセットをいくつか聞いたことある人は、なんか馴染みあるサウンドかもしれない。

やっぱりAviciiは、メロディーが肝だと思う。

6. Philter- Revolver (Avicii Remix)

この「PhilterRevolver (Avicii Remix)」というタイトルを見てパッとどんな音楽かイメージがつくAviciiファンは少ないかもしれない。

しかし、「Coldplay Every Teardrop Is A Waterfall (Avicii Remix)」なら、どうであろう?

関連記事 : Avicii New ID シリーズ「2011(with NERVO)」

この「PhilterRevolver」は、オリジナル曲も面白いというか、全体的な完成度的には未熟かもしれないが、楽器の種類と組み合わせ、そしてそのバランス。”種(Seed)”としては、興味深い楽曲だなぁと思った。

関連記事 : demo for Avicii

7. Killers & Rockers – I Always DJ Naked At The Terrace

なんと Aviciiは、初期の頃「ハウス トリオ」を組んでいたらしい。

自分は”Wake Me Up“でAviciiを知り、そこから遡った人間なのでそこまでは知らなかった。

ハウス トリオ」というのは、

ハウスミュージックのDJトリオ(3人組)」ということだが、「Killers & Rockers」というグループ名までついている。

3人は、EP「I Always DJ Naked」をリリースし、12曲入りのアルバムを計画していたが、Tim Bergling(ティム)が”Bromance“のリリース後に、急速に成功したため、後にキャンセルされた。その後、ティムには計画していたアルバムを完成させる時間がなく、グループは解散したようだ。

Bromance“に関しては、著作権で色々揉めたらしく、だから、”Bromance“は、Avicii表記ではなく、Tim Berg表記と、なっているのかもしれない。facebookもザッカーバーグがアイディアを盗んだとして、双子の兄弟が訴訟した事件もあったが、有名になるとは、ある意味自分では選べないことであり、時代に選ばれる必要がある。こういったことは避けようがない。

また、Timの死後に、その訴訟を起こしたテラノバがその当時予定していたアルバムの音源を流出させ、その12曲+”She’s Fresh“というNew IDが現在、YouTube上で試聴可能。

I Always DJ Naked“はリリース済みだが、知られざる過去として「ハウス トリオ」の音楽がどんな感じかというサンプルとして、今回はこの動画を選んだ。気になる人は、その13曲をぜひ、聞いてみてほしい。もしかしたら、そのアルバムをまとめた記事も作るかもしれない。

8. Ease The Pressure (feat. Wrabel)

[Verse.1]

Afrojack(アフロジャック)とのコラボ曲”Ten Feet Tall“でも有名な”Wrabel(レイベル)”をフューチャリングした1曲。

ID名は、”Ease The Pressure” or “Let It Go“として知られる。

日本人は、この曲を非常に好むと思う。

8. Let It Go (Avicii New ID)

[Verse.2]

このIDは、2012年のAviciiのDJライブセットには登場するが、2013年以降一度も登場しない。もしかしたら、2013年1月5日、Aviciiが「パソコンを盗まれた。過去にプレイした8つの新曲が入ったファイルが入っていたが、バックアップしていなかった」とツイートしたその8曲の内の1つが、このIDだったのかもしれない。

関連記事 : 天使の悪戯!(消えた8つの新曲)

9. Rock Me (Avicii New ID)

このIDは人気なので、Aviciiファンなら、聞いたことあるかもしれない。

Avicii」らしいというかTimにしか表現出来ない独特な音楽だ。

10. Enrique Iglesias Ft. Pitbull – I Like It (Avicii’s Alternative Radio Edit)

スペインのキムタクみたい存在———Enrique Iglesias(エンリケ・イグレシアス)。

2015年頃まで、Pitbull(ピットブル)と同じく、クラブミュージック界を盛り上げていた。

Aviciiと言えば、”Levels“, “Wake Me Up“という人は多いかもしれないが、本当にたくさんの曲をリミックスしたり、マッシュアップしたり、オリジナル曲の数も凄い。成功者は成功したものだけに注目されるが、とにかく目に見えない部分で半端ない数をこなしているものだ。

関連記事 : Avicii (アヴィーチ) の人気曲「Wake Me Up」の意味は、『死なせてくれ』だった!?

11. Tracks Of My Tears

スモーキー・ロビンソンの”Tracks Of My Tears“のアカペラをサンプリングし、楽曲は、Aviciiの”All You Need Is Love“とほぼ同じ。

全体として、まとまった感じがあるのは、アルバム「True」に収録された”All You Need Is Love“だが、個人的にはリリースに至らなかった”Tracks Of My Tears“の方が、好きかな。

今回紹介した曲の中では、最もエモーショナルで、感情に訴えかける力のある楽曲だと思う。

All You Need Is Love (アコースティックバージョン)

この記事を作成中に、たまたま見つけた動画。

ボーカルを務めているRuth-Anne(ルース・アン)があるパーティーで歌っている貴重な映像。

20秒しかないのだが、「もっと聴きたいフルバージョンを聴きたい」と思うような魅力が後からじわじわ来るようなアコースティック・バージョン。

そんな20秒だ。

因みに、Ruth-Anne(ルース・アン)は、

「シンガー・ソングライター」であり、自身のシングル以外にも、他のアーティストの楽曲もプロデュースしている。

その中には、One Direction(ワン・ダイレクション)のシングル、解散後のLiam(リアム)やNiall(ナイル)のシングルも複数あり、JOJOシングル、ブリトニースピアーズのシングル。

そして、

Martin Garrix & Bebe Rexha – In The Name Of Love (DallasK Remix)

Martin Garrix(マーティン・ギャリックス)とBebe Rexha(ビービー・レクサ)のコラボ曲”In The Name Of Love“の作詞にも参加してる。

個人的に、意外だった。

最後に

Avicii New ID [厳選掛け流し]

この記事の Aviciiの「エネルギー」をまとめて取り入れたい方は、この”源泉掛け流し“動画も用意しているので、ぜひ。

ラジオ向けの音源は少なくクラブミュージック向けのサウンドが多い。

快適さ“はないかもしれない。だが”快適さ“なきものに「芸術家の秘宝」は隠れているものだ。

おまけ

最後まで載せるか載せないか非常に迷った1曲。

Aviciiの2011年のプロダクションなのだが、何度も聞きたくなるようなタイプの曲ではない。

ただこの記事を制作中に偶然見つけた楽曲で、選曲で絞っていくときに、一度外したのだが、時間を空けてからまた制作し直している際に、まるで「俺を入れてくれ!」と言わんばかりにアピールしてくる感じが強かったので、最後におまけとして、ちょこんと載せることにした。

ちなみに、曲名の「Amazeballs(アメーズボールズ)」は、「Amazing」の砕けた表現で使われることがある単語らしい。