アメリカ合衆国ユタ州、モアブという町の近くに「アーチーズ国立公園 (Arches National Park)」という自然保護区がある。
今回は、この国立公園で、男3人でハイキングをした時のエピソードを記したい。
海外現地発着ツアー
アメリカ48州を縦横断。
2016年の夏、
僕は、Trek America (トレックアメリカ) という海外現地発着ツアーの「The Great 48」に参加して、アメリカ48州をジグザグに縦横断した。
スタート地点は、マイアミで、終点が、シアトル。
全部で、80日間かけて、アメリカを縦横断したのだが、「アーチーズ国立公園 (Arches National Park)」を訪れたのは、65日目くらいかな。
だいぶ旅の後半の方だ。
この「トレックアメリカ」という海外現地発着ツアーは、1グループが、10-12人の少人数。
バンに乗って移動し、アメリカの観光地や国立公園を訪れるのだが、基本的に、目的地に着くと、自由行動なのが、海外のツアーの特徴で、魅力の一つである。
ユタ州モアブのキャンプ場を拠点にした時は、
・町でショッピングしたい人
・キャンプ場のプールでリラックスしたい人
・国立公園にハイキングしに行きたい人
など、結構みんなやりたいことが、バラけた。
ツアーメイトは、トレックアメリカのリーダーを含め、11人いたのだが、
結局、ツアーリーダーのタイラー、建築家志望のマット、僕の3人は、「アーチーズ国立公園」で、ハイキングをしに行った。
アーチーズ国立公園は、かなり広くて、大きく分けると、3,4ヶ所エリアがある。
その中でも、僕たちは、デビルズガーデン (Devils Garden) のエリアを訪れた。
デビルズガーデン (Devils Garden)
*Landscape Arch*
国立公園最大の迷路へようこそ。
このエリアの1番の見所である「ランドスケープ・アーチ (Landscape Arch)」は、最寄りの駐車場から歩いてすぐの場所にある。
だが、僕たちが挑戦するのは、
「デビルズガーデン・トレイル (Devils Garden Trail)」という、アーチーズ国立公園で、最も距離があり、難易度の高いトレッキングコースだ。
*Primitive Trailを含む。*
トータルの距離は、「7.2mile (11.6km)」。
順調に歩いていく僕たち。
100mくらい歩くと、あのランドスケープアーチがあり、それを見た後は、ハイキングコースの標識に従う。
最初は、ひたすら平坦な道を進んでいく。
周りの景色は、こんな感じ。
一面拓けていて、
ユタ州らしいデザート (砂漠地帯) の風景の奥に、レッドロックの岩山が見える。
だが、自分たちの歩くコースは、次第に、コンパクトな世界へと突入していく。
しばらく歩いていると、
赤い岩山の間の谷間を歩く感じへ。
そして、この辺りから、ハーキングコースの標識もなくなり、代わりに、誰かが作った「赤色の積み石」が、数十メートル置きくらいに存在し、標識の役目を果たしている。
*これは、違う地域で撮った写真だが、図の中央にあるのが、「赤色の積み石」。*
最初は平坦だった道も、所々、両手を使いながら岩を登ったり、ジャンプしたりと、スムーズには進んで行きにくくなってきた。
多くの人の歩む道が、本当に正しいのか!?
そして、途中で、
四面すべて背の高いレッドロックに囲まれた中庭のようなスペースに辿り着くと、
僕たちは、ハイキングコースを完全に見失い、迷子になってしまった。
しかし、それは僕たちに限ったことではなく、道に迷ったハイカーが、その辺をグルグルと、ハイキングコースを探している。笑
あまりにも標識がなく、道らしい道がたくさんあって、どこが既定のハイキングコースなのか、さっぱりわからないのだ。
視界には、僕たちよりも先に迷子になっていた欧米人の若い男女5人組が、正面の岩山を登ろうとしたが、あまりにも険しくて、断念して戻ってくる姿が見える。
自分の方向感覚では、正面の左方向が、スタート地点である駐車場の方向に思えるけれど、
「いや、こんな角度のあるところが、ハイキングコースではないでしょう。」
と思ってしまうような赤い岩山が、立ちはだかっていた。
すると、先ほどの若い欧米人たちが、
四面の岩山の中でも、1番なだらかな右側の山を越えようとしていた。
そして、同じく迷子の僕たちに向かって、
大声で、「この山を超えた先に、たくさんの人が歩いてるのが見えるわよ。」と、語りかけてきた。
だが、ひねくれてる男3人組の僕たちは、「なんか、あっちじゃない気がするんだよなぁ。」という感じで、彼女たちをフォローせず、違う道をトライしていた。
そんな僕たちの様子を見て、
「別に強制するわけじゃないけど、みんなこっちを歩いてるわよ。」と、
「みんなこっちを歩いて行ってるから、正しい道よ。」という論理で語りかけてくる。
それでも、僕らはあまり聞く耳を持たないでいると、彼女は、
「一応、親切心で、情報を提供しただけよ。お好きにどうぞ。じゃあね。」と語って、
その山を降りて行った。
僕たちは、もちろん彼女が、親切心から話してくれたのはわかっていたので、「ありがとう!」とでっかい声で、返答し、その上で、違う道をトライし始めた。
まあ、なぜ僕たちは、みんながたくさん歩いていく方向に進まなかったかというと、単純に、
直感的に、そっちじゃない気がしていたから。
少なくとも僕はそう感じていて、
彼女たちの忠告を無視して、自分が正しいと感じる方向で、道を模索していた。
それが、たまたま、ツアーリーダーのタイラーも、建築家志望のマット君も、考えが一致していたのだ。
だから僕たちは、彼女の忠告を無視して、僕たちが正しいと思う方向の道を模索し始めた。
しかも、3人とも、我が強く、我が道を行く性格なので、みんな別々に道を探していた。笑
その中で、たまたま僕の登っていた道が、行けそうな雰囲気が出てきて、登り進めていると、
あの「赤色の積み石タワー」を再び発見した。
それでも、まだこの道がゴールへと続く道なのかを確信は持てなかったのだが、
「とりあえず、信じて進んでみよう。」ということで、僕ら3人は、その道を必死に登り始める。
結構傾斜があって、大変ではあったが、
山場を超えると、そこには道が広がっていた。
*僕が眺めてる方向は、僕たちが登ってきた道。*
この後は、凄く楽で、
道らしき道をひたすら進んでいくと、あの最初の見所である「ランドスケープ・アーチ (Landscape Arch)」の近くに辿り着いた。
*Landscape Arch*
僕たちは、見事に、あの迷路のようなハイキングコースを脱したのだ。
みんなで無事に切り抜けたということで軽くハイタッチして、駐車場へと向かう。
精神的には試された部分があったが、肉体的にはそんなにきつくなかったので、あんまり強い達成感はなかったけれど、爽快感はあった。
「自分の直感を信じて良かったなぁ。」と。
ハイキングを終えて、駐車場に辿り着き、キャンプ場へと向かう車の中、
「彼女たちは、無事にゴールしたのだろうか?」
僕は、ふと疑問に思った。
ゴールに辿り着いても、あの時に迷っていた人たちを見かけることはなかったからだ。
多くの人が歩いていく方向に進んでいったが、ゴールに辿り着けず引き返したのか。
それとも、そのまま僕たちとは別のルートでゴールしたのか。
僕には、彼女たちのその後はわからない。
でも、僕たちの進んだ道が、ゴールに辿り着いて、しかも、彼女たちよりも、早く辿り着いたのは、明らかだった。
そして、今回のハイキングのことを振り返っていると、
「あれ?これって、今の自分の人生とリンクしてるかも!?」と、思い始めた。
僕が、大学在学中に、このアメリカ横断の旅に、挑戦した理由の一つとして、
敷かれたレールの上を歩きたくはない。
というのがあった。
高校を卒業して、大学に行って、就活して、就職して、その会社で勤め上げるみたいな、多くの人が歩む道を、僕は歩みたくなかったのだ。
だから、人生はこうするべきだとか、みんなこうしてるからとか、日本社会がこうだからとか、頭で計画を立てて、人生の選択をしていくのではなく、直感や自分の心の声に従った道を進んでみようと。
その大きな一歩が、今回のアメリカ横断だった。
直感に従うと、道は開ける!?
僕は、今回のアーチーズ国立公園でのハイキングを通して、
多くの人の歩む道が、決して正しいとは限らない。
ということを自分の身をもって体験した。
多くの人が歩んでるからという理由で、道を選択するのではなく、自分の直感に従って、道を選択して行った結果、僕は、ゴールへと辿り着いた。
大多数の人が歩んでいくような道を進んだとしても、全然ゴールとは違う方向に進んでいってるということもあるし、決して正しいとは限らない。
「それなら、自分の直感を信じ、自分の進みたい道を進んで行った方が、良いじゃないか。」
これからの人生、アメリカから帰ってからも、自分の直感を信じて、自分の進みたい道を切り開いて行こう。
今回のハイキングは、そう勇気付けられたというか、この経験が、自分だけの道を歩もうとしていた僕の背中を後押ししてくれた。
「道」なんていくらでもある。
それに、今回ハイキングしたコースも、標識すら全然なく、そもそも道無き道だった。
一応、アーチーズ国立公園のビジターセンターが、「ここがハイキングコースです。」と勝手に決めてるだけで、別にハイキングコースそのものが、元々あるわけではない。
山脈や川を境目にして、勝手に国境と定めるように、ハイキングコースも、あくまで、
人間の思考の産物に過ぎないのだ。
だから、ゴールへ辿り着く道は、いくらでもあるし、色んな道 (ルート) がある。
そして、それは、人生も同じだと思う。
多くの人が歩んでいくからといって、その道が正しいとは限らないし、そもそも「道」なんて、誰かの辿った物理的な過程を勝手に人間が名付けただけのものなのだから、
自分の直感を信じて、自分の歩みたい方向へ、ただ進んでいけばいい。
僕は、アーチーズ国立公園のハイキングの経験から、大切なことを学んだように思う。
それも、一緒にハイキングをしたツアーリーダーのタイラー、建築家志望のマット、そして、この時のハイキングで出会った人みんなのおかげだ。ありがとう。
関連記事 : ヨセミテハイクから学んだのは、『人生は、過程を楽しむもの。』だということ。
コメントを残す